第98回 「追悼 大瀧詠一さん」

ご存知だと思うが<はっぴいえんど>のメンバーであり、日本のロック&ポップス・シーンにおける重要なオリジネイターの一人でもあった大瀧詠一さんが亡くなった。65歳という若さだった。
大晦日の慌しい中でのそのニュースを、私はしばらく理解できず、気がつくと時間が過ぎていた。
その夜、紅白歌合戦の<あまちゃんコーナー>で笑い、小泉今日子と薬師丸ひろ子の歌を聴き終えたると、次第に複雑な想いが込み上げてきた。大瀧さんはこの二人に曲を書き、ともにヒットさせていたからだ。
大瀧さんのファンだった者としてここ20年の動きを見る限りにおいて、大瀧さんはシンガーソングライターとしての活動はすでに終えられていたと思うのだが、70年代から現在まで長期に渡ってラジオ番組や音楽雑誌で展開されていたアメリカやイギリス、そして日本のポップス史についての緻密な分析と指摘はロックとポップスのファン・マニアにとっては何よりの教科書だった。大瀧さんの詳細な解説によって、どれだけロックとポップスへの理解が深まったことか。
このような功績はもしかすると大瀧さんが創り上げた名盤『ナイアガラ・ムーン』や『ア・ロング・ヴァケーション』といった屈指の“ナイアガラ・サウンド”以上に大きいような気がする。
自分も含めて思うのだが、還暦を過ぎたら何があっても不思議ではない。競馬に例えると第4コーナーを回ってゴールへの直線に入っているのだから。が、何があっても不思議ではないと思うその反面、実感としてまだ若いだろう!という意識も十分にある。
そのあたり、気分が揺れ動くが、ただ、やはり60代での死はあまりにも早すぎやしないか、と。寿命は人それぞれだとは分かってはいるのだが、やはり切ない。
80年代初頭だったか、金沢で大瀧さんがレコードをかけながら曲解説をするというイベントがあって出掛けたことがあったが、結局、大瀧さんのコンサートを観ることは叶わなくなってしまった。今はもう大瀧さんのご冥福をお祈りするしかない。
なんだか似つかわしくない文章になりました。申し訳ありません。
が、これも実感ですので―。
今月25日の放送ではとりあえずですが、<大瀧詠一・フォーエバー>と題して特集をお送りします。