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グッドミュージックをフルコーラスでお届けします♪音楽が一番輝いていたあのころに、青春を過ごした人そして、そんな時代の音楽が大好きな人へお届けする30分です。

竹中晃のコラム ポケットにいつも音楽を入れて -ロック・おやじのつぶやき-

歌舞伎・文楽・江戸散歩~今年はちょいとジャパネスク

 早いもので、今年も残すところあと二ヶ月となった。
 昔、大人たちが話の端々に『アッと言う間に一年過ぎて行くちゃ』と多少語尾を上げながら言っているのをよく聞かされたものだが、どうやらその気分が実感として湧いてきた。

 いや、本音を言うと、湧いてきたどころか、一年が加速度的に年々早くなっていると感じている。
 例えば去年十月にイギリスへ行ったが、どうにもそれが一年前のことだとは思えないわけで、「エッ!もう一年かあ!?」と、唖然としてしまった。大げさに言っているのでは決してない。それほど一年という時間が早く過ぎるようになってしまった。

 思えば、今年は還暦だった。人生の暦が大きくぐるりと一回りしたわけで、この齢まで何とか無事に来られたことに感謝するしかない。結局、齢を重ねたぶんだけ時間が早く過ぎるようになってしまうのは仕様がないのだと、自分に言い聞かせている。『アッと言う間に一年過ぎて行くちゃ』と言っていたオヤジさんたちの苦笑した顔が浮ぶ―。

 さて。
 昨年初頭あたりから気まぐれに始めたウォーキングが続いている。飽きっぽいのであちこちコースを変えて歩いているうちに、なんだか上手い具合にハマってしまったのだ。
 で、その勢いは旅先でも変わらず、たまに東京へ出掛けたときにもコースを探しては歩くようになった。これを自分では<モヤ・ブラ>と呼んでいる。パクリ!だが・・。

 東京での散歩コースは基本的に隅田川の周辺で、その時々の気分で浅草とか佃島などのエリア別に歩いている。この辺りは学生時代には縁のない場所だったので、これがなかなかに新鮮だ。

 隅田川沿いをスカイツリーを目印に歩くぶんには道にも迷わないし、迷っても高が知れている。それであちこちウロウロしていると、だんだんと江戸の町の遺跡やら名残りやらを目にすることが増えて、今度はそっちの方面に興味が出てきてしまった。<ウォーキング+江戸探し>の一石二鳥。

 そんな江戸散歩の延長上で見つけた新たな楽しみが<歌舞伎>だった。
 今年四月の当コラムで書いたように、ロック・コンサートの代償行為的な意味合いで軽い気持ちで出掛けたのだが、初めての歌舞伎観劇がなんとも良くて、その後も新装なった歌舞伎座に出掛けてしまった。
 それだけではない。そんな江戸文化への関心は、<文楽>を観にいくまでに興味の先が広がってしまったのだ。

 <文楽>は予想以上に良かった。よく、『見入っていると人形遣いの存在が消えて、人形が人間以上に喜怒哀楽を表す』てなことを耳にするが、まったくそのとおりで、歌舞伎以上に引き込まれてしまった。

 私が観た演目は一時間ほどやってから十分の休憩が入り、今度は二時間ぶっ通しで上演して三十分の休憩、そして最後に一時間近くやって終わるという、なんとも長尺だった。
 これが<文楽>の基本的な上演時間なのかどうかはわからないが、それにしてもこれだけ長い上演時間でもまったく飽きないというすごさ。“日本の伝統芸能恐るべし”としか言いようがない。

 また、<歌舞伎>の長唄、三味線、鳴物などにも惹かれたが、<文楽>も音楽がいい。太夫の語りと三味線のハーモニーが絶妙で、それはもうエリック・クラプトンやジェフ・ベック級のロックにも引けを取らない迫力を感じた。

 これならもっと前から観ておけばよかった!と思わないでもないが、おそらく若いときに観ても“良さ”が分からず、退屈で我慢できなかったに違いない。そんなもんだろう。

 それにしても<歌舞伎>といい<文楽>といい、ここまで魅了されるとは思ってもいなかった。もちろん、江戸散歩や神社仏閣に手を合わせるというのもそうなのだが、この齢になってようやく日本人のDNAとでもいうか、日本人として本来持っている伝統文化への感性を確認したような気がする。

 まあ、こうした新たな楽しみが出来たのも齢を重ねたからこそのことで、そう思うと齢を取ることも案外悪くはない。
 ただ、これ以上一年が早くなるのだけは勘弁願いたいのだが・・・。

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